sanuki story project

266さよなら、私の小さな幸せ 香川県  栗原清華さん
その他
可愛い靴を買ったので、嬉しくて散歩をしている。

住み慣れた街。
この道を歩いても、あの道を歩いても、
その道を歩いても、彼との思い出が蘇ってくる。

彼と別れてから、それなりに
一人で毎日小さな幸せを大切に過ごしてきた。

アイラインが上手くひけたとか、
毎朝の淹れたてのコーヒーとか、
今みたいに可愛い靴を履いて散歩をしたりだとか、
そういう小さな一人の幸せ。

歩いて街を見渡せば、どんどん記憶が蘇ってくる。
一人の小さな幸せなんて、
どうでもよく思えるほど強烈で幸せな二人の日々。



可愛い靴は大抵、靴擦れするものだ。
でも今靴擦れしているのは、
可愛い靴のせいではなく、遠くまで歩きすぎたせい。

別の街まで来てしまった。
もっともっとと、欲張って歩いてしまったみたいだ。

足が痛くてしゃがむ。
ふと先を見ると、彼がいた。

また出会ってしまった。
さようなら、私の小さな幸せ。