sanuki story project

237さぬきの休日 兵庫県  花嫁なみださん
その他
大阪に住む直美は、定年を迎えた同い年の夫が嘱託で働かずにプラモデルの城作りに専念していることにイライラしていた。
『私も夢を掴みに行ってきます』とだけ書き置いて、直美は観音寺市の巨大な銭形砂絵『寛永通宝』を見に行くことにする。
お金のパワースポットに感動した直美だったが、本当のお目当ては以前ロト7で高額当選が出た『観音寺チャンスセンター』という宝くじ売り場だ。へそくりからロト7を一万円、宝くじを一万円買った。計二万円は少々高いが致し方ない。
それから直美は「そうだ」と思い付く。
「チャンスの神様は前髪しかないって言うし、『ローマの休日』でオードリーヘップバーン演じる王女も髪を切って素敵な経験をしたんだったわ」
宝くじ売り場近くの美容院で、直美は前髪を切りそろえてボブスタイルにしてもらった。鏡に映る自分の姿に満足した直美は、評判のうどん屋へ足をのばした。夜はレストランに入り、さぬきの地ビールも頼んだ。明るい気持ちになって伸び伸び振る舞い直美は人目を引き、レストランのオーナーから声を掛けられた。
「よかったら街を案内しましょうか」
六十女にだってチャンスは訪れる。さぁ、恋かお金か、直美はチャンスの前髪を掴めるか……。

夢のような『さぬきの休日』は三日後、直美を捜し当てた夫が来て終了する。二人で金比羅さんに行くことになった。
夫が、長い階段でへたった直美と手を繋ぐ。
「何年振りかしら」。二人で過ごす長い休日の始まりだった。

後日、何と宝くじの三等百万円が当たった。もちろん夫には内緒だ。「夫婦には秘密も必要なのよ!」