sanuki story project

209そして‘都市’伝説へ… 香川県  新田綱志さん
笑える話
讃岐うどんブームよりずっと前の話。
その頃、ぶっかけうどんは今ほどメジャーなメニューではありませんでした。
香川に引っ越してきて間もない僕は、大阪に住んでいた先輩にうどん屋さんに連れて行ってもらいました。
田んぼの真ん中で食べるのどかなお店です。
それでもお客さんは沢山いて、僕たちの周りには大学生らしき女の子グループとツーリング中の男性二人が居ました。
その時の会話。
「かけうどんとぶっかけうどんの違い知っとるか?」
「なんな、教えてーや」
「大将のだし注ぐ勢いがちゃうねん」
「マジで! 値段違うのに! それやったら、ちゃんとぶっかけてくれてるか見とかないかんな」
「そーや。逆にかけ頼んだのに勢い余ってぶっかけてくれるときもあるからな」
「得した気分やな」
「前の人が連続でぶっかけ頼んだ時がチャンスや」
「ぶっかけ、ぶっかけ、かけでつられてぶっかけるみたないな?」
もちろんそんな訳ないのは当時でも知っていたのですが、女の子たちがクスクス笑ってくれていたので調子に乗ってくだらない話をしばらく続けていました。

その後、5㎞位離れた別のうどん屋さんにはしごしました。
入口に4台の県外ナンバーのバイクが止まっていて、2台はさっきのうどん屋さんにいた男性たちのものです。
このお店も外で食べるスタイルなのですが、そこには綺麗な女性ライダー二人と楽しそうに話している先ほどの男性二人が居ました。
「ぶっかけうどんって知ってる?」
「はい。食べたことはないですけど」
「じゃあ、かけうどんとの違いってわかる?」
「えー、何ですか? 分からないです」
「お店の人のだしの入れ方が違うんだって」
「えー、そうなんですか!」
「勢いよく入れるのがぶっかけうどんなんだよ」
「一つ賢くなりました」
なんかもう、完全に信じきっていました。
都市伝説ってこうやって生まれるんだなと思いました。